世界初のアルツハイマー病の根本治療薬誕生か?

健康

アデュカヌマブ、米国FDAが申請を受理し優先審査に指定

米バイオジェンとエーザイはアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」アルツハイマー病治療薬として米国FDAへ生物製剤ライセンス申請し、受理され優先審査指定されたと発表しました。

優先審査指定により審査期間が短縮され、PDUFAアクションデートは2021年3月7日に設定
承認されれば、アデュカヌマブはアルツハイマー病の進行に本源的な変化をもたらす可能性を持つ、初めての治療薬となります。

今までの認知症治療薬との違い

今までのアルツハイマー型認知症治療薬は治療を目的としたものではなく認知機能の低下を遅らせるだけの治療薬でした。これが治療といえるのかどうかはわかりませんが、唯一の選択肢だったわけです。エーザイは「アリセプト」で有名な認知症治療薬のメーカーでもあります。アミロイドβがアルツハイマー病の原因ではないか?といわれて久しいですが、世界中の名だたる製薬会社がこぞってアミロイドβ仮説に基づいて治療薬開発に乗り出しました。アミロイドβ仮説が出た時は治療薬の開発はそう遠くない未来にできるだろうという楽観的な予測がありましたが、有効性を見いだせずことごとく撤退しています。これが承認された場合、アデュカヌマブはアルツハイマー認知症(AD)の臨床症状の悪化を抑制する初めての治療法となり、かつ脳内アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床結果の改善をもたらすことを実証した初めての治療法となります。

一度は臨床試験を中止した?

2019年3月にP3試験(EMERGE試験とENGAGE試験)を中止したのは、試験を続けても有効性を示す見込みがないと予測されたからです。両試験の独立データモニタリング委員会は、あらかじめ定められた無益性解析の結果から「主要評価項目が達成される可能性は低い」と判断。両社はこれを受け入れ、試験の中止を決めました。

https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17164/

何やら難しいですが、要は有効性が無いと独立データモニタリング委員会に一度は判断され受け入れて試験を中止したが、2本試験を行ったうちの1本が要件を満たしていたようです。バイオジェンとエーザイは、データの追加によって高用量投与群の患者数が増えたことが主な要因とみているようです。P3試験は期間中に2度、より多くの患者に高用量を投与できるようプロトコルの変更を行ったそうです。ENGAGE試験より1カ月遅れてスタートしたEMERGE試験のほうがプロトコル変更の影響を強く受け、高用量投与群の比率が高まったことが、両試験の結果を分けたとのことです。

唯一無二の治療薬となれるか

実際のところアルツハイマー病の発症のメカニズムは解明されていません。アルツハイマー病患者の脳内には、細胞外にアミロイドβたんぱく質を主成分とする老人斑が見られること、神経細胞内にタウたんぱく質が蓄積して生じる神経原線維変化が見られること、神経細胞の萎縮や脱落が見られることが分かっているが、何が発症の引き金になっているのかなどは解明されていないそうです。現在、有力視されているのは、長い年月(20年~25年ともいわれる)をかけてアミロイドβが脳内に沈着して、それがタウたんぱく質による神経原線維変化を起こして、最終的に神経細胞が脱落するというアミロイドβ仮説と呼ばれるものです。この仮説に基づいて、これまでに数多くの医薬品の開発が進められてきましたが、ことごとく失敗しています。業界ではタウ蛋白質を標的にする方法にシフトしているそうです。また、エーザイはBAN2401という抗体薬も開発中で現在は、最終段階の臨床試験を行っているそうです。この薬は脳内アミロイドβ蓄積の陽性(アミロイドPET検査で定量した脳内アミロイド量を数値化し、事前に定めた境界値以上)でエーザイによると「早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、後期臨床試験として、世界で初めて臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。現在、201試験の非盲検投与延長試験および検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。」との事です。

希望の光

アルツハイマー病の治療において今まではアリセプトなどのコリンエステラーゼ阻害薬とメマリーなどMNDA受容体拮抗薬くらいしか選択肢はなく、それも治療ではなく記憶障害を改善する効果しかありません。薬効もわずかな期間で、絶対に治らない病気といわれていたのですが、治る可能性が出てきたと思ってもいいのではないかと思います。これからの推移に目が離せません。

アデュカヌマブ https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202050.html

BAN2401 https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202042.html

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